私の実家では20歳になると母から実印をプレゼントされていました。
20歳の時はまだ大学生だったのでそこまで深く考えてもいなかったですし、頂けるものであれば頂きます、程度の本当に軽い気持ちでした。
しかし母からしてみれば大人になれば大人としていずれ使う日があり、しかも実印を使うと言うことは非常に大きな責任を持つ、ということを私に理解をして欲しかったらしいです。
これは後に成人式の日に母から言われたのですが、そこまで深く考えて贈ってくれたんだということが印象的で忘れられません。
そして母は名字で作らず、私の下の名前で作りました。
私は女なのでいずれお嫁に出ていくことを考え、名字で作ると結婚後にもう1回作り直す必要があるからと思ったそうです。
実際に母がお嫁に行った時に作り替え、今度は父と離婚したときに再び作り直したらしいのですが、女は名字が変わると大変だ、ということを痛感したからだと言っていました。
私には当時付き合っていた人はいましたが、大学生でまだ結婚を考えてもいなかったので何も考えず話を聞くだけで、名字が変わると言うことはそんなに大変なものなのかな、と軽く考えていました。
しかし結婚して名字が変わった時に医療保険や車の保険の様にすぐにでも変更が必要なものや、気付いた時に変更すれば良いようなレンタルカードなど細かいものも含めれば名字変更の届け出の多さに正直まいりまして、実印だけでも作り直さなくて良かった、と母に感謝しています。
名字変更はまだ1回しかしていないですが、現段階で2回名字が変わった母の言っていた意味を当時の私も痛感しました。
ところで私には姉と兄がいますが、もちろん姉は名前で兄は名字で作りました。
占いが大好きな姉は風水に従い作ることにこだわり、その年の良い方角にあるお店にし、色や素材だけでなくもケースにも細かく指定をし結構な値段で作ったそうです。
それに対し私は本当に軽い気持ちだったので何も気にせず、母の勤め先の近くの店で作り、当日その場で値段も高くないもので、と適当に作りました。
姉妹で価値観が違い過ぎ、あまりにもこだわりを持ち過ぎた姉とあまりにも気にしなすぎる私と両極端な2人を母は心配したらしいですが、結果として私は後に付き合った人と1年で結婚を決め、姉は色々人を見過ぎて当時の彼氏にフラれてしまい現在も婚活中です。
こだわりを持っているから結婚できなかった、という訳ではないですが、姉のこだわり過ぎて周りが見えなくなる性格は今思うと婚期を逃してた要因の1つではないかと今でも思います。
妥協ではないのですがお互いに歩み寄り寄り添うことが結婚なのでは、と私は思うのですが、これに関しては姉が怖くて今でも指摘できません。
ちなみに兄も私と同じくこだわりを持たず母に全てを任せたそうで、大学生時代に付き合っていた彼女とめでたく結婚しています。
実印を使う時は人生で多くはない、と母に言われていた通り、結婚した現在、実は未だに公の場で使ったことはありません。
車を新車で購入したときも主人の実印を使ったので、私のは未だに公の場では未使用です。
しかし娘がスタンプにはまった時に私の物を見つけたらしく、ひたすら紙に判を押していました。
どうやら朱肉にポンポン紙にポン、という行為が面白かったらしく、新品同様だったはずなのに気付いた時にはちょっと使い込んだ状態に見えるほど名前の部分が真っ赤になっていました。
子どもの手に届く範囲に置いていた私が悪いのですが、実際に私が公の場で使うよりも先にまさか娘に遊びで使われる日が来るとは考えておらず、ちょっと母に申し訳なく思いました。
後に母に話した時には、壁や床に判を押さなかっただけ良かったね、と笑ってくれたので良かったですけど、アパート住まいなので今思うと本当に良かった、と思います。
今は娘の手の届かないところに厳重に保管していますが、引っ越してから印鑑登録をしていないので、公式には効力を持っていないんです。
結婚後に作り替えなくて良かったですが、印鑑登録という市役所まで出向かなければならない面倒くささに認印程度の効力しか持っていないことは正に宝の持ち腐れ状態です。
それが分かっているなら母の思いのためにも早く印鑑登録をしなければ、と思い引っ越してから6年近く経っています。
多分、使う時が来ないと印鑑登録をしないんだろうな、と面倒くさがりの性格に我ながらあきれてしまいますが。
結婚し、娘が1人と息子が1人産まれましたが私も母の様に20歳になったらそれぞれに実印をプレゼントしたいと思います。
もちろん娘には名前で、息子には名字で作る予定です。
その時には母と同じように思いを込めて素敵な1品を贈ることが出来るようにします。
子どもたちはこだわる性格なのか、そうではないのか選ばせる時が今からちょっとだけ楽しみです。
ちなみに旦那さんは娘も名字で作れ、と言い、結婚をさせたくないらしい溺愛ぶりです。